- トムソン・ロイター
- 【Practical Law】北浜法律事務所
ウエストロー・ジャパン(株)が提供するリーガルソリューションである「Practical Law」。 世界各国の法制度・判例に関する解説や契約書雛形等の実践的コンテンツを多数収録し、 多くのユーザーから支持されている。今回は、国際法務の最前線における活用者のひとりである 北浜法律事務所の田島弁護士に、その活用術についてお話を伺った。
「Practical Law」で効率化を実現彩
──「Practical Law」をどのように役立てていま すか?
田島:ウエストロー社のリソースは日常使いをして いますが、特に「Practical Law」を頻繁に活用し ています。英文契約書の作成時にベースとなる雛形 を探したり、相手方から契約書を受け取ったときに 「どう修正すれば依頼者の利益が図れるか」のヒン トを探すことも多いです。また、諸外国の法律や実 務について最新の情報を知りたいときにも重宝しま す。もちろん、現地の信頼できる弁護士に正式なリ サーチを依頼する場合も多いのですが、現地弁護士 への問い合わせには相応なコストがかかりますし、 「Practical Law」に掲載されている内容は十分な精 度と情報量がありますので、依頼者のニーズに応じ て使い分けるようにしています。
──「Practical Law」の利用前はどうでしたか?
田島:われわれ弁護士はまったくの白紙状態から契約書を書き起こすことは多くはありません。通常、その案件に条件の近いサンプルや雛形をベースに、依頼者ごと、案件ごとの特性を反映させていきます。以前は、事務所内で蓄積していたフォーム集や、案件を通じて目にした完成度の高い契約書を収集・分類した自分独自のデータベース、あとは紙ベースの雛形集などを利用していました。
「Plactical Law」の概念図
──「Practical Law」でデータベースの増大と省 力化が一気に実現できたのですね。
田島:雛形をダウンロードすれば、再度自分で条項 を打ち込むことなくそのままデータの形で編集がで きるので、大幅に効率化が進みました。収録されて いる雛形も10,000 件以上と非常に豊富であり、た とえば売買契約書でも、買主側に有利なものと売主 側に有利なもの、さらにそれぞれについてロング/ ショートバージョンが掲載されていたりと、かゆい ところに手が届くところに魅力を感じています。 また、海外で先行している法分野で、日本ではあ まり先例がない書面を作らなければならないような 場合も「Practical Law」は非常に参考になります。 たとえば、データプロテクションやSDGs につい ては欧米発信の情報が多いので、国内外を問わずそ うした先進的な分野の書面を作らなければならない ときによく参考にしています。
──「Practical Law」のどのような機能がとくに 便利だと思われますか?
田島:契約書の仕事では、「Standard document」 と「Standard clause」の2つをよく利用しています。 「Standard document」は、すでにお話ししたよう にさまざまな契約書の雛形が収録されており、一方 の「Standard clause」は条項単位で検索が可能となっ ています。たとえば、新型コロナウイルスに関連す る条項にどのようなものがあるかなど、ある条項の みを限定して調べるときによく利用しています。 また、「Standard document」では契約書の各条 項の下に解説が表示されるのですが、この情報がと ても充実しており、かつ細かく設定されたリンクを 通じて関連する項目について調べることも容易なた め、非常に便利だと感じています。特に若手の弁護 士が体系的な知識を効率的に身につけるのに適して おり、教育的な効果が非常に高いと思います。
ユーザーのレベルアップを可能にする
──「Practical Law」は弁護士ユーザーが多いで すが、企業の法務部にとっても有益なツールですね。
田島:弁護士には本当に便利なツールで、国際法 務を取り扱う多くの法律事務所で導入されていま すし、もちろん企業の法務部にもおすすめです。 「Practical Law」は、法務部でも契約書のクオリティ の向上・均一化に一役買ってくれると思います。
海外との契約、つまり英文契約書のクオリティを 保つのは難易度の高い仕事です。社内に充実した英 文契約書の独自のデータベースやスキルの蓄積があ る企業は限られるかと思います。また、英文契約の 作成やチェックのスキルは極めて属人的になりがち で、誰が担当するかで大きくばらつきが出ることも あります。しかし、その案件に適したサンプルを適 切に使用すれば、一定水準以上のものをより容易に 揃えることができるようになります。さらに、丁寧 な解説が付されていますので、法務部員のスキル アップにもつながるかと思います。
企業の法務部の方も、われわれ弁護士も、今後は 業務の効率化がこれまで以上に求められます。とく に企業法務の弁護士は、迅速な対応を求められる場 面が多く、かつタイムチャージで仕事をしているの で、同じプロダクトを出すのであれば「より短い時 間で」ということが常に要求されます。これまで慣 れ親しんだ手法から新たなシステムに移行するのに は慣れが必要ですが、長期的な視点で考えれば、業 務の効率化につながる新しいツールをいかに使いこ なしていくかに頭を使ったほうが今後の発展に資す るかと思いますね。