- トムソン・ロイター
- 【Practical Law】 双日株式会社
──御社法務部の業務内容について教えてください。
高林: 双日は、世界約50カ国で事業を展開する 総合商社です。国内外において無数とも言える 商取引を行い、事業も年々拡大しつつあるので すが、その中でもクロスボーダーのM&Aの比率 が年々高まっています。つまり、伝統的には、例え ば、石炭を輸入し国内で販売する中で、単純に価 格差で利益を得ていたのですが、炭鉱に権益を 持つ海外企業を買収するチャンスを得ることが あります。このようなM&Aは弊社単独で行うこと もありますが、他企業とのJVを設立し、進める場 合もあります。
そして、このような海外企業買収による多様な ビジネスで必要となってくるのが、NDAをはじめ とする多様かつ緻密な英文契約書です。法務部 は、こうしたM&Aを含む海外とのあらゆる商取引 に必要な英文契約書のドラフティングは必須の スキルであり、それに関連してアドバイス、訴訟、 債権回収など法務面でのサポートを多角的に行 い、営業部の円滑な商取引を支援しています。
英文契約書のひな型の量が圧倒的に豊富で多彩
営業部は、自動車、航空産業、エネルギー、化学、 食料、リテール、産業基盤などカテゴリーごとに 9部門に分かれ、商取引全般をカバーしています。 これにコーポレートを加えた10部門を、契約面で は3つの課で担当し法的支援を行っています。分 野によって担当者を変更することはなく、同じ担 当者が英文契約書のドラフティングやアドバイス、 訴訟、債権回収など多岐にわたって担当するため、 あらゆるリスクをカバーした契約を締結するスキ ルが求められます。その中で、必要な条項が漏れ なく記載され、同時に当事国において有用性が 担保される英文契約書を作成しなければなりま せん。そういった業務を日々進める中で、あらゆ る事例をカバーし、英文契約書のひな型量が圧 倒的に豊富な〈Practical Law〉は、必要不可欠な ツールであると言えます。
──具体的には、〈Practical Law〉をどのように 活用していますか。
板倉: 〈Practical Law〉導入前は、法務部の各 課・各人がフォルダを作成しており、プロジェクト ごとにレビューした英文契約書をファイルし、そ れをデータベースとして別の部員が活用すると いう方法が取られていました。私がまだ新人の頃 は、ドライブ自体にNDAなどの用語を入れて検索 し、手当たり次第に閲覧しながらひな型になりそ うな資料を何とか探し出し、ドラフティングすると いう作業を行っていたような記憶があります。た だ、フォルダの作成方法・格納頻度には個人差が あることや、どのようなバックグラウンドで作成さ れた契約なのかが分からないため、自分が担当 する事例に適したドラフトであるかが、判別しにく い等の問題もありました。そこで、私は、自分専用 のフォルダを作成し、先輩にチェックしてもらった ものを類型ごとにファイルして活用していました。 また、英文契約辞典のような書物があり、それと データベース内のひな型と見比べながらドラフ ティングするということも行っていました。とにか く、データベースがあるとは言え、最終的には自 分自身が経験とケーススタディを重ねながら英 文契約書の知見を蓄えていく、というアナログな 手法をとっていました。
一般的な契約書は弊社の雛形が既にあるケー スも多いのですが、〈Practical Law〉では、サンプ ル条項を効率的に入手できるようになったので、 契約書レビューの際にも参考にしております。ま た、サンプル条項に対する説明や主要な判例の 解説も業務を進める上で参考になります。
ドラフティングのプロセスに革新をもたらした
高林: そういった意味で、〈Practical Law〉導入 は、部内のドラフティングプロセスに革新をもた らしたと言えるでしょう。弊社の法務部員は57名 いますが、そのうち34名が有資格者で、法務部 としてのクオリティはかなり高いレベルにあると 自負しています。当然、活用するソフトやシステム に求めるレベルも高く、信用がおけるものでなく てはいけない。〈Practical Law〉は、数百名の弁 護士の方を雇用してデータベースを構築し、リア ルタイムでアップデートしていると聞いています。 実際に利用している私たちから見ても、高度な要 求を満たし、信用に耐えうる水準なので安心して 活用しています。
板倉: リアルタイムなアップデートは、判例の 積み重ねによる契約法の最新情報が入手でき、 適切な英文契約書を作成する上でとても有用 だと思います。インターネットで調べて得られる 情報もありますが、いつ更新された情報なの かは分からない。そのための裏取りにかかる 手間と時間を、〈Practical Law〉は解消してくれ ます。
〈Ask a question〉で検索の手間と時間も解消
また、〈Practical Law〉内に設けられている 質問機能〈Ask a question〉も、作業効率を高め る上で有効だと思います。例えば「求めている 契約書はどこを探せばよいか」などの質問メール を送ると「どこどこにあります」などの答や案内が 返ってくるシステムですが、これは広大なショッピ ングモールで求める商品にたどり着けるようナビ ゲートされる感覚にとても近いです。先日も、他 国の特殊な支払い規定について調べようと思い、 検索をかけたら適切な条項を見つけることがで きなかったので、〈Ask a question〉を使って質問 してみました。すると「ペイメント・タームだけが まとまっているノートがあります」と案内してもら い、すぐに必要な資料にたどり着くことができま した。また、仮に求める資料を取り扱っていない 際にも、「このコンテンツならお役に立てるかもし れません」といった提案をしてくれる場合もあり、 とても重宝しています。
ですので、私は少し探して見当たらない際は、 何でも〈Ask a question〉を使って聞くことにして います。なぜなら、求める資料がなかった場合、探 すことに費やしていた時間が無駄になるからで す。検索に時間をかけるより、聞いてしまう。これ も、ドラフティングの効率を高める上で有効な手 段だと思います。
法務のスペシャリティを高める教材にも
板倉: 〈Practical Law〉は、自分たちの法務スキ ルを高める教材としても応用できる水準です。私 は現在、部内で若手向けの勉強会を定期開催し ています。契約法に関するトピックで、去年1年間 に起きた判例の中で重要な案件を勉強していく 会です。契約の成立、約因、損害賠償、ペナル ティ、解除など、契約法の分野の各論点関する判 例を研究する中で、基本的な知識はほぼ全て 〈Practical Law〉を活用して進めています。特に、 リンクが所々に貼ってあり、不明な点をそのリン クにアクセスして確認できる点は便利です。また、 判例法は過去の判例の積み重ねにより形成され ていくものなので、過去の判例も含め丁寧に解 説がなされている点も役立っています。
(PRACTICAL LAW製品イメージ)
──今後、リーガルテック、〈Practical Law〉に 期待することは何ですか。
高林: 〈Practical Law〉導入によって得られる第 一のメリットは、やはり時間の短縮だと思います。 私たち法務のスペシャリストから見ても信頼のお ける情報が集約されていて、検索性も高い。英文 契約書をドラフティングする際の手間と時間が、これにより大幅に削減されました。
そして板倉が申したように、〈Practical Law〉を 教材として活用することによる若手の早期育成、 ひいては部全体のさらなるレベルアップを図れ るのもメリットだと思います。
しかし最大のメリットは、こうして業務に余裕ができた分、例えば人事、労務関係、環境やサスティナブル関連など、他の様々な業務を取り込んだり、手を広げられたりできる点だと思います。企業としての法務業務のクオリティが向上し、幅を広げることが社会的信頼の獲得にもつながっていく。こうしたメリットを踏まえ、リーガルテックには、量・質ともにいっそうのブラッシュアップに役立つ製品づくりを期待したいですね。