- トムソン・ロイター
- 【TMI総合法律事務所事例】Westlaw Japanをリーガルリサーチに活用
社会全体におけるコンプライアンス意識の高まりにより、リーガルリスクの存在があらためてクローズアップされている。トラブルや事件が発生したとき、あらたなビジネスに踏み出すとき、そこにどのような法的問題が生じ得るのかをマッピングするのがリーガルリサーチである。
膨大な法令・判例データベースである法律情報総合オンラインサービスWestlaw Japanを駆使することで、信頼度の高いリーガルリサーチを提供するTMI総合法律事務所の白石和泰弁護士と山田怜央弁護士にその考え方や手法について話を聞いた。
リーガルリサーチとは
──本日はTMI総合法律事務所の白石弁護士と山田弁護士に、リーガルリサーチについてお伺いします。
白石:リーガルリサーチは、法的なトラブルが生じたときの適切な解決手法の選定のために必要であったり、新たなビジネス分野を開拓する場合にハードルとなる法的な規制や論点の存在を探索する場合に必要となるなど、リーガルリサーチが必要となる場面はさまざまです。
山田:どの場面でも共通するのは、リーガルリサーチが法的な観点からリスクを調査・分析する手法であるということです。具体的には、法令に反するか否かが最も重要な検討対象ですので、法令調査がリーガルリサーチの第一歩だと考えます。ただ、法的リスクの分析において、法令だけでは具体的な事案に応じた分析をするためには十分とはいえません。ゆえに事実に対して裁判所が何をどう評価したかを語る判例も、リーガルリサーチを行ううえで非常に重要な検討対象です。
ちなみに弁護士事務所では、私のような若手の弁護士がリーガルリサーチを担当することが多いですが、少なくはない時間を使って、労力を惜しまず法令や判例等について調査を行うことになります。その調査の内容をパートナーが確認し、大局的な判断を下します。パートナーとアソシエイトの最大の違いは事案についての「落とし所の勘」です。これこそが弁護士としての腕の見せどころだと私は思いますが、そのための根拠としてリーガルリサーチは必須です。
白石和泰弁護士
山田怜央弁護士
弁護士のWestlaw Japan実践例
──Westlaw Japanにはどのような特徴があるとお考えですか。
白石:判例についてはもちろん網羅的に収録されていますし、わかりやすいユーザーインターフェイスになっているので、使い勝手がよいと思います。なくてはならないリーガルリサーチツールの1つです。
Westlaw Japanを使ったリサーチの際に留意しなければならないのは、検索結果が多すぎると表示結果すべてを検討できませんし、逆に少なければ情報が不足している可能性が高くなるという点です。
山田:判例を掲載しているページと異なるタブに「要旨」というものがあります。ここにはさまざまな情報が記載されており、該当判例に関連する条文、裁判官の情報、評釈、引用判例や被引用判例などのリンクが貼ってあります。わかりやすく情報がまとまっていて、非常にありがたいですね。
Westlawは海外でも評価が高いようで、アメリカのロースクールでは必ず使われていると聞きます。日本でも多くの大学・法科大学院で導入され、使い勝手の良さから私も学生時代からお世話になっていました。
左から TMI総合法律事務所 白石和泰弁護士 TMI総合法律事務所 山田怜央弁護士
──リサーチのツールとしては、書籍や雑誌文献などの電子データ提供サービスも使われていますよね。
白石:法律図書のコンテンツが最近充実してきており、何冊も持ち運ばずに済むのはありがたいので積極的に取り入れています。最近、商事法務の書籍コンテンツとWestlaw Japanの判例・法令データベースを融合したサービスが開始されました。これは会社法分野において非常に有用なリーガルリサーチツールといえるのではないでしょうか。
──Westlaw BOOK PLUSですね。
山田:電子書籍は本当に助かるサービスです。書籍は手に入れるのにタイムラグが発生してしまうため、緊急で必要になった時すぐに参照できるのもありがたいですし、弊所の図書館の蔵書も限界はありますので、書籍が取り合いになることもあります。誰でもいつでも読むことができる電子書籍サービスの開始に、アソシエイトは大袈裟でなく歓喜しています。
判例要旨では、裁判経過、出典、評釈、参照条文、裁判官名などを記載。他に、判例全文のタブと判例解説のタブに見やすく分かれており、裁判例の全体を知ることができる。
伴走者のような存在に
──リーガルリサーチツールの未来についてはどのようにお考えでしょうか。
白石:やはり、AIを使ったリーガルリサーチの利便性の向上に期待しています。例えば、プロンプトの調整を何度もせずとも該当の判例や関連書籍がすんなり出てくるとありがたいですね。
山田:そういう機能があるとリーガルリサーチをする上では、我々弁護士事務所の弁護士だけではなく、企業の法務部の皆様にとってもより簡便になってよいように思います。
白石:企業の皆様にとっては、弁護士事務所に頼まず内製化できるという意味でリーガルコストの削減につながるでしょう。そうなると弁護士事務所としては現在のようなリーガルリサーチの仕事は減るでしょうが、また違う形で価値を生み出せるようにがんばりますし、それこそが法律事務所の真の価値であると思います。
自然言語処理の形で、構えて考えずとも気軽に聞けるような、まさに伴走者のような存在にリーガルリサーチツールがなってくれるとよいですね。