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【Westlaw Japan】

法情報サービスの活用方法と展望を鹿児島大学米田憲市教授に聞く

米田憲市(よねだ・けんいち)鹿児島大学法文学部教授/司法政策教育研究センター長

日本国内のコンテンツとリーガルソリューションに加え、グローバルコンテンツとソフトウエアソリューショ ンを含む総合的な法情報オンラインサービスを法律事務所、企業、教育機関、政府機関へ提供するトムソン・ ロイター。 

今回は、「全国条例データベースpowered by eLen」の運用や、離島部という特殊環境を含むリーガルサー ビスの提供を踏まえた地域の法曹教育に尽力されている、鹿児島大学司法政策教育研究センターの米田憲市 教授に、Westlaw製品を含む法情報サービスの活用方法と展望についてお話を伺った。


──鹿児島大学は、以前より、離島部を含む地方でのリーガルサービスの提供とそのための人材教育について、さまざまな教育施策を実施されてきたとお伺いしていますが、弊社製品のようなデジタルないしオンラインの法情報サービスは、どのように活用されていますか。

日本の場合、規範となる六法(全書)は、多少重くても持って歩けないことはないとはいえ、(リーガルクリニック等での対応として)相談された事案に対し、最初から対象法令を特定できるわけでもありません。一般的な調査方法として、類似する判例や文献の調査から示唆を得ることは外せませんから、オンライン製品への接続にネット環境が要求されるとしても、現地での調べ物をしたいときの資料の不足を、最大級の収録範囲で現地に持ち運んでカバーできることは非常に助かります。もっとも、このことは、離島部や山間部に限ったことではなく、都市部と比べて資料が圧倒的に不足している地方全体について言えると思います。

──地方での環境として一般化しうる「資料の不足」という点について詳しく教えていただけますか。

よく言われるとおり、地方では、都市部と異なり、流 れてくる情報の量に差があり、さらに、地元密着型で生 活のための情報が一定の割合を占めてしまう傾向があ るため、日本全体あるいは世界の動きという視点での 情報が薄くなりがちで、自ら意図的に情報を取りにいか ないと入手できないという問題があります。

その点、Westlaw Japanの1つの有用な特長として、 製品にサインオンした最初の画面に、無償のニュース のヘッドラインが表示されているのは、非常にありがた く思っています。また、「最新の法令や判例」なども検 索せずとも紹介されていることも大事です。

──ご指摘のとおり、弊社日本法製品では、最新の法米田憲市(よねだ・けんいち)鹿児島大学法文学部教授/司法政策教育研究センター長令・判例のご紹介コーナーのほか、すべてのお客様に直近1週間分のニュースを製品内にて無償で表示しておりますが、それが有用とご評価いただけている理由を詳しく教えてください。

明確に意識できている事柄に対しては深掘りして調査していくことができますが、「世間の動きを掴む」というのは、言われればそうだとか、これまで考えていなかったことを含めて総合的に知覚しておくことを必要とします。特に、普段の生活を過ごすだけでも情報があふれる都市部と違い、情報が偏りがちな地方部で、(広い意味での)リーガルサービスや社会科学に属する分野に身を置こうとしている学生の基礎的な知見と感覚を磨いていくためには、貴社製品に入ったときに、それだけで、世の中の動きが自然と入ってくること自体が非常に重要なことだと考えています。

──意識的な(法情報)調査のほかに、意識しにくい「世の中」の情報を、潜在的に横目で確認しておけることにもお役に立てているのですね。法情報サービスが、日常的な調査のインフラへと移行してきたことも関係がありそうですが、この10~20年くらいで、その必要性の異同や変遷で思われるところを教えてください。

みなさん、具体的には、あまり便利さを意識されていないのですが、これらサービスを利用することで作業効率は格段に上がっています。それにより、執筆などの作業全体の効率も上がっているはずで、より便利なサービスを求めることはあっても、サービスがない状況が想定できないところまできているのではないでしょうか。

たとえば、こうしたオンラインのサービスがない時代には、判例ひとつ読むのに、図書館や資料室へ行って、印刷物をコピーして持って帰って、調べ忘れたもののためにまた図書館へ行って、というようなことをしていたわけです。今からすれば、とんでもない非効率さです。それが、研究室にいながらにして、印刷もでき、用語の出現箇所も簡単に発見できるわけですから。サービスの導入で生まれている作業効率をゼロに戻せと言われても、ちょっと想像したくないですね。

──弊社では、授業・研究のインフラとして耐えうる機能、内容を目指しておりますが、使い勝手はいかがでしょうか。また価格についてご意見はありますか。

で、勝手なことは言えませんが、ユーザーとしては、「利 用すること」それ自体に手間が少ないと、非常に助かり ます。限られた予算の中での利用ですから、こちら側で の工夫も必要な面はもちろんありますが、たとえば、授 業で使う度にどこかに連絡をして、というのは、それだ けで利用のハードルが上がりますから、間違いなく利用 頻度が落ちていきます。あるいは、アカウント数の制約 から同時アクセスができないと、学生が授業中の説明 を受けても、その場では使えなかったりします。

先程、作業効率の話をしましたが、紙媒体の時代と は異なり、授業の前後で資料室の1冊を行列を作って 順番にコピーする時代ではありませんから、何冊分を提 供するか(同時アクセスがいくつか)というよりは、授業 期間中は受講者全員が同時に利用可能な環境をどう 整備しておくかが、コンテンツやサービスに慣れて、そ の後も利用者たり続ける、お互いによい関係になるの ではないでしょうか。

その点、Westlaw Japanは、授業での利用にピーク を合わせた価格体系をご用意いただいていますから、 とても心強く思っています。

──特に時間のない時代ですから、今後も、研究・学習に必須の環境づくりに貢献できればと思っております。さて、より便利に、という文脈では、AI(人工知能)のサポートを受けたサービスが取り沙汰されることが多くなりましたが、どのようにお感じでしょうか。

(AIを)「使うか」・「使わないか」という議論になりがちですが、もはや、AIが関与した生成物を個人で完全に排除することは不可能と考えています。たとえば、立法担当者や裁判官が、文言の作成自体には利用しなかったとしても、予備調査段階や念のためのダブルチェックにAIを利用するケースが出てくると想定すれば、法情報の作成段階から入り込むわけですし、そうした一次情報を元に執筆された論文などの記事もまた、AI生成物から逃れられません。したがって、調査の場面でだけAI系のサービスを排除しても、言うほど排除できません。それであれば、うまくAIを活用して、より便利なサービスが使えるようにしてもらえるとありがたいな、と思います。

──弊社グローバルでは、AIを活用した製品の開発に力を入れていく方針ですので、どうぞ今後にご期待下さい。最後に、現在貴センターで提供されているサービスについてご紹介いただけますか。

この場を借りて、大きく2つご紹介させていただきますと、1つは、「全国条例データベース」です。通称「eLen(エレン)」と呼んでいるもので、これは貴社からも支援をいただいていますが、全国の自治体の条例や規則(例規)の情報を1か所にまとめると同時に、(例規の)立法・法制支援として、同傾向にある条例を寄せて比較し、立法時の参考にして頂くことができるようになっています。

もう1つは、「明治期官僚・官職データベース」(國岡DB)です。これは、元々、おひとりで作成されたデータを譲り受けたExcelのデータを無償提供し、さらにオンラインで検索できるようにしたものですが、明治期に官職にあった人物名鑑で、氏名および組織・職名等での検索が可能であるほか、各人の役職ごとの在職期間の表示や、個人や役職から情報をたどることができる稀有なデータベースです。

──さまざまなお話をありがとうございました。貴センターにて、現在ご提供されているサービスとともに、弊社および弊社製品も、みなさまのお役に立てればと思っております。

ぜひWestlaw Japanをお試しください。