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【Westlaw Japan】

牛島総合法律事務所

牛島総合法律事務所 弁護士、ニューヨーク州弁護士、パートナー井上 治 氏(いのうえ・おさむ)

圧倒的な判例数の豊富さで〈Westlaw Japan〉製品を導入。高度な紛争処理を行う実務家にとって不可欠なツール。


──牛島総合法律事務所は、高度な紛争処理、 サービスの質の高さ、実績に定評のある法律 事務所です。同事務所では複数の法律・判例データベースを併用されていると伺います。〈 Westlaw Japan〉の導入を推進いただいた 図書部門担当パートナーである井上治弁護士に、導入の理由や、どのように本製品をご活用いただいているのかをお聞きしました。

いかに有利な判例を押さえるかが、紛争処理のカギ

──どのような法律業務や案件に携わってこられたのかお聞かせください。

私が所属する牛島総合法律事務所は、国際取引に関連する法律事務や訴訟をはじめ、内外でのビジネス・ロー一般、多岐にわたる法的手続き、紛争処理を取り扱います。 

私自身は、国内外の企業や行政機関における様々な紛争処理案件のほか法律実務を広く取り扱っています。訴訟の中で主なものとしては、不動産取引に関する建築瑕疵や、土壌汚染に関する訴訟、上場企業の少数株主保護に関する訴訟、金融機関のシステム開発に関する訴訟などがあります。その他、国際相続等個人を依頼者とする案件にも関与しております。また、関連するテーマについての様々なセミナーや執筆も行っています。

(判例検索 ‒ PROサーチ)
(判例検索 ‒ PROサーチ)

──〈Westlaw Japan〉は、どのような経緯で導入をお決めになられたのでしょうか。

一番の理由は、2011年の導入当時、他の判例データベースに比べ、判例(とりわけ直近の東京地裁判例など)の収録数が圧倒的に豊富だったことが挙げられます。 

我々のように紛争処理を扱うことが多い弁護士にとって、類似した案件に関する判例をどれだけ把握しているか、さらにいえば、どれだけ相手方よりも有利な判例を知っているかは、裁判の勝敗を決める重要なファクターとなります。逆に、相手方にとって有利な判例がある場合でも、当方がそれを予め知っていればそれを踏まえた対応を採っておくことができますが、相手方から指摘されるまで当方が知らなかった場合、対応に窮することにもなりかねません。こうした理由から、判例データベースにおける収録の豊富さ、網羅性が高いこと(判例検索 ‒ PROサーチ)は、極端な表現をすれば弁護士としての信頼度に直結し、死活問題といっても過言ではありません。そのため、日本で利用できる判例データベースの現状を踏まえれば、複数利用して、可能な限り網羅的に判例を検索できる環境を整えることが必要と考えています。当事務所における判例データベースの充実を図るために、〈Westlaw Japan〉は 欠 く こ と の で き な い重要なデータベースです。この他の導入理由としては、判例収録タイミングの速さ、裁判官検索機能があります。本機能は、主には新件受任などの際に、担当裁判官の経歴や過去の判例を確認する際に利用していますが、合議体の裁判長として関与した判例や単独で関与した裁判を判別できる点も気に入っています。

──判例を探すどのような場面で、〈Westlaw Japan〉を活用いただいていますか。

ある案件について関連するルールを示した代表的な判例を探すためにも使いますが、裁判所のルールを複数の判例から立体的に捉えていくために利用することも多いですね。例えば、建築瑕疵に関する訴訟があるとします。コンクリートの柱に一定のヒビが入っている場合は瑕疵とするという判断を、ある裁判所が示 し た と し ま す 。と こ ろ が 、そ の ヒ ビ が 5センチでも瑕疵となるのか、10センチ入っていればそうなのかという“線引き”は、判例を個別に見ているだけでは判断がつきにくいのです。基本的な規範の確認だけならともかく、細かい当てはめまで体系的に分析したいとなると、多数の判例から導き出される判断の傾向の分析やその際の判断要素のようなことも必要となります。いくつもの判例から総合的に見て、今回の事案では瑕疵とみなされる、いやそうではないという分析の場面では対象判例の母数の多さが重要になってきます。

個別の判例としては見出すべき要素はないが、集合としていくつもの判例を用意することで類型化し、意味や説得力を高められるというケースはよくあるので、相手方よりもそれを可能とするツールの確保と充実は、我々にとって重要課題であるといえます。

実務家にとっては、まさに「痒い所に手が届く」

──個別の機能やコンテンツでご活用いただい ているものはございますか。

 「PROサーチ」はよく利用しています。フリーワードでの検索を行う際に、キーワードの間が何文字以内かという指定を入れて検索できる機能です。例えば、「建築瑕疵」と入力するとかなり限定的なものとなり、「建築に関する瑕疵」といったワードには引っかからなくなってしまいます。逆に「建築」と「瑕疵」の間にスペースを入れてAND条件で検索すると、相互の関連性が薄くなり、検索そのものの意味がなくなってしまいます。「PROサーチ」は、「建築」と「瑕疵」の関連性を保ちながら幅広いサーチができ、求めている判例の絞り込み作業がとてもスムーズに行えるので、以前から利用している他社製品にも本機能の採用を要望したこともあるほどです。本機能は実用性が非常に高いと感じており、当事務所においても同製品の活用頻度の高さの1つの理由となっています。

 また、アメリカ法製品の「KeyCite」機能のように、ある判例を検索した後、その判例を引用した他の関連判例へと情報を広げたり、評釈や参考文献を調べられたりできる点も、使い勝手がいいと感じています。

──法律関連の出版物を執筆しておられますが、 そうした際にも〈Westlaw Japan〉製品はお 役立ていただいておりますでしょうか。

 かなりヘビーに役立てています。直近では、民法改正と不動産取引をテーマとした本、都市再開発をテーマにした本を執筆しています。執筆に際しては、ある論点をピンポイントに深めていくのではなく、さまざまな事例を挙げ、その各論点をコンパクトにまとめて紹介するという作業がメインとなります。例えば都市再開発でいえば、土壌汚染に関連した訴訟問題があります。 特定有害物質はもちろん、PCBやアスベストなど、様々な毒性物質に関する判例を調べる際は、「PROサーチ」を含めた「フリーワード検索」、「関連判例」の引用が役立ちます。また、そうした判例を並べながら解説を加える際には、その判例に紐づいた「評釈」や「出典」を簡易にチェックできるので、さまざまな考え方、法的解釈を念頭に入れながら執筆を進めることができます。また、判例の注目度を★印の数で判別して並べ替えられる「PowerSort(重要判例順)」も、大まかな目星をつけながら検索を行う際に便利です。紛争処理においても、本の執筆においても、実務家にとっては「痒い所に手が届く」ツールという印象です。

(判例結果 ‒ PROサーチとPowerSort)
(判例結果 ‒ PROサーチとPowerSort)

──ありがとうございます。最後に、WLJへのご 要望や、読者の方へメッセージをいただけ ればと思います。

 当事務所では、紛争処理に強くあり続け、クライアントへのベストなサービスを提供するために、実現しうる最善の状況、入手しうるベストなリサーチ環境を整えることを常に心がけており、〈Westlaw Japan〉はその一環として導入したものです。現状日本は、アメリカほどの判例社会ではありませんが、今後は進展する国際化や社会的な問題意識の変化とともに、より高度で多様な紛争処理能力が我々に求められてくると思います。また、民事判決のネット提供の発展も予定される中、〈Westlaw Japan〉には、その時々の状況に応じて我々の業務を今後も支えていただくとともに、判例データベースとしてのさらなる進化を期待したいと思います。

そうなると、法令だけ押さえればよいことにはなりません。企業が守るべき方針、理念は法律に書いてあってもその詳細や従うべき基準は条例によることもあるので、各事業拠点の条例を押さえることが必須になります。ところが、条例を見逃しているケースは実際には多いです。都道府県の条例を把握しても、市区町村の条例の方が厳しければそちらにも従わなければならないので、行政から指導を受けた際に、間違いを指摘される例はものすごく多いですね。

──条例は把握しづらいですが、どのように対応されていますか。

環境分野は規制がめまぐるしく変わるので、「条例アラート」を活用しています。これがないと、その時点の都道府県・市区町村の条例を全て自ら把握し、かつ変更がないか、今後変わる可能性がないかなどの情報を、能動的に取りに行かなければならないことになります。そうすると必ず漏れが出てしまいます。

また、新しく条例ができる、改正されるという情報は自治体のWebサイトなどで発信されますが、そのタイミングは不定期です。具体的にどのように対応するべきかの詳細についてはガイドライン等を待つことになりますが、条例改正とのタイムラグも結構あります。そうなると、条例改正後の一時期は条例違反の状態となる可能性も出てきてしまうので、改正情報をより早く入手できるシステムで継続的にウォッチした方が安心できると感じています。

条例アラートでは、都道府県に市区町村や広域的な事務組合等を加えた数多くの自治体について、条例を網羅できるところが魅力です。企業の場合は、本社と工場などがある地域で、都道府県と市区町村について見ればよいということになります。弁護士の場合は、どのような依頼が来るかわからないので、案件ベースで管理することになります。また、新旧対照表はすごく便利で、新しい条例と古い条例で何が変わったのかを、丁寧にわかりやすい対照表で見せてくれるのが、実務的には助かりますね。

──「法令アラートセンター」も使われているそうですね。

 「法令アラートセンター」は国の法令について、改正を通知するだけでなく、Web上でその法令について管理できるのが利点です。管理というのは、その法改正について、企業の対応の要否、いつまでに対応しなければならないかを設定し、対応状況の管理ができる仕組みです。環境法の流れで言うと、直近の大気汚染防止法改正では調査対象となる建物が20倍以上になったり、土壌汚染対策法でも、直近の改正では事前届け出の対象地が今までの倍になったりするなど、規制対象がどんどん増えている状態にあります。法令・条例違反を避け、ビジネスに直結するリスクを管理する意味でも、漏らしてはならない情報だと考えます。

「法令アラートセンター」のアラートメール
「法令アラートセンター」のアラートメール

──環境分野の違反や対応漏れは、どのようなリスクとなるでしょうか。

法令や条例違反を犯した場合のリスクは、他の企業や近隣住民に大気汚染・土壌汚染・地下水汚染を拡散させた場合の賠償責任や刑事責任、行政処分、さらに信用を低下させ失うリスクの大きく4つがあります。最初の賠償リスクでいうと、土壌汚染の対策費用は何十億円とかかり、企業だけでなく、役員個人が負担すべきと株主から訴えられるリスクもあります。 行政処分についても、自治体として積極的に動く傾向が強まっており、指導を含め数多くなされている状態です。環境分野もそれ以外の分野でも、法の不知は罰せられることになりますので、致命的なリスクになり得ます。細かい条例も含めて、企業の責任として管理していくうえで、トムソン・ロイター〈Westlaw Japan〉の「法令アラートセンター」、「条例アラート」は役立つツールだと思います。

ぜひWestlaw Japanをお試しください。